コスメブランドのPR施策において、こんな悲鳴が聞こえてくることはありませんか?
「インフルエンサーに『熱量を込めて自由に書いてください』と依頼したら、薬機法NG表現だらけの原稿が上がってきた」 「法務チェックで真っ赤になった修正原稿を戻したら、投稿から熱量が完全に消えてしまった……」
これは、インフルエンサーの責任ではありません。リスクを恐れるあまり、ブランド側が「後出し」のチェック体制しか機能させていないことが、根本的な原因なのです。
インフルエンサーのクリエイティビティを奪い、当たり障りのない「お礼投稿」を量産してしまう「手戻り地獄」。本記事では、この悪循環を防ぎ、「法令遵守」と「熱狂的な口コミ」を両立させるために、ブランド側が実践すべき「先回り」の準備について解説します。
なぜ薬機法チェックは「手戻り地獄」を生むのか?
PR施策が円滑に進まず、インフルエンサーが疲弊してしまう背景には、典型的な失敗の構図があります。
失敗の構図:「自由に書いてください」という“丸投げ”
ブランド(依頼)側が薬機法の知識を十分に持たず、明確な表現のガイドラインを示さないままインフルエンサーに「自由に書いてください」と依頼してしまうケースです。
依頼されたインフルエンサーは、商品の魅力を最大限に伝えようと、熱意を込めて原稿を作成します。その結果、良かれと思い、「シミが消えた」「リフトアップする」「肌が再生する」といった、消費者に響くものの薬機法違反となる表現を多用してしまうのです。
「後出しの朱入れ」が熱量と信頼を奪う
原稿が上がってきた段階で、初めてブランドの法務部門や代理店がチェックに入り、「全部NGです」「この表現は使えません」と、原稿を真っ赤に修正して差し戻します。
これを受けたインフルエンサーは、「じゃあ、何と言えばいいのか?」「これでは書くことがない」と混乱し、疲弊してしまいます。何度も修正が往復するうちに、投稿へのモチベーションは著しく低下します。
最終的に、すべての熱量が削ぎ落とされ、「素敵な商品をいただきました」といった当たり障りのない「お礼投稿」に成り下がり、誰の心にも響かない投稿が完成してしまうのです。
解決策は「先回り」。インフルエンサーを守り、熱量を引き出す「攻め」のガイドライン
薬機法は、ブランドにとって「制限」であると同時に、「化粧品として、どこまで魅力を伝えて良いか」を明確に示してくれる「ガイドライン」でもあります。
重要なのは、インフルエンサーがクリエイティブを発揮する「前」に、ブランド側が「安全に魅力を伝えられる表現の枠(OK表現)」を明確に示すこと。これこそが、インフルエンサーを守り、熱量を引き出す「攻め」のガイドラインです。
アプローチ①:「NG表現」ではなく「OK表現」を渡す
「手戻り地獄」を防ぐ最も効果的な方法は、ブリーフィング(事前説明)の段階で「OK表現」の具体例を豊富に提示することです。
- NG例:「シミが消える」
- OK例(先回りして提示):「メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐ」(※美白有効成分配合の場合)、「日焼けによるシミ・そばかすを防ぐ」
- NG例:「シワがなくなる」「リフトアップする」
- OK例(先回りして提示):「肌にハリを与える」「肌を整える」「乾燥による小じわを目立たなくする」(※効能評価試験済みの場合)
このように「言えること」を先に提示することで、インフルエンサーはその枠の中で、安心して自分の言葉で表現を工夫することができます。
アプローチ②:「効能効果」ではなく「感情と使用感」にフォーカスしてもらう
薬機法が厳しく規制するのは、主に「効能効果(体にどう作用するか)」の部分です。一方で、インフルエンサーの主観的な「使用感」や「感情」は、熱量を伝える上で最も重要であり、かつ表現の自由度が高い領域です。
- 「ベタつかないのに、翌朝までしっとり感が続く“この感じ”」
- 「高級感のある香りで、“癒されるこの瞬間”」
- 「パッケージが可愛くて、ドレッサーにあるだけで“気分が上がる”」
ブリーフィングの段階で、「効能効果」を説明してもらうこと以上に、こうした「使用感(テクスチャー、香り、肌なじみ)」や「感情(心地よい、気分が上がる)」を、ご自身の言葉で表現してほしいと具体的に依頼することが鍵となります。
熱量を「本音の口コミ」に変える、もう一つの“先回り”
薬機法をクリアするだけでは、投稿は響きません。インフルエンサーが「このブランドを本気で応援したい」と思ってくれるような「熱い想い」の共有こそが、最高の“先回り”です。
“機能”ではなく“ストーリー”をブリーフィングする
インフルエンサーを単なる広告塔として扱うのではなく、「ブランドの想いを共に届ける共犯者」になってもらうことが重要です。
そのためには、商品の機能説明だけを渡すのでなく、開発の背景にある「熱い想い」や「ストーリー」をブリーフィングで共有します。
(事例)私たちは過去、あるD2Cヘアケアブランドの立ち上げをご支援した際、業界の常識だった「悩みを煽るネガティブな訴求」をあえて却下しました。そして、「悩みを心地よく解決し、ポジティブな未来を手に入れる」というブランドの“哲学”をインフルエンサーと深く共有しました。結果、その想いにインフルエンサーが強く共感してくださり、熱狂的な口コミが生まれ、大きな成果へと繋がりました。
「薬機法の専門知識」を持つパートナーと組む
とはいえ、ブランドのご担当者様がこれらすべてを抱える必要はありません。
私たち(ファーストテンプル)は「コスメ薬機法資格」「化粧品検定2級」を保有しています。このような専門知識を持つパートナーが間に入ることで、ブランド側の「守り(法令遵守)」と、インフルエンサー側の「熱量(攻め)」を両立させる最適なブリーフィング設計と、スムーズな進行管理が可能になります。
薬機法チェックを「検閲」から「共創のガイドライン」へ
インフルエンサーが疲弊し、投稿の熱量が失われる原因は、ブランド側の「後出し」のチェック体制にあります。
インフルエンサーのクリエイティブを「検閲」のように後から修正するのではなく、
- 先回りした「OK表現集(ガイドライン)」
- 心を動かす「熱い想い(ストーリー)」
この2つを事前に提供すること。
これこそが、インフルエンサーとの信頼関係を築き、法令を遵守しながらも「熱狂的な口コミ」を生み出す、唯一の方法ではないでしょうか。
「インフルエンサーとの薬機法チェックに工数がかかりすぎている」 「修正の往復で、投稿の熱量が下がっていると感じる」 「法令遵守と“売れるUGC”を両立させたい」
もし、このような課題をお持ちなら、薬機法とブランドの「熱い想い」の両方を理解する私たちに一度ご相談ください。素晴らしい商品を持つブランドの「かけこみ寺」として、スムーズで熱量の高いPR施策の実現に「伴走」します。

